御大典記念「村正」特別公開の御礼

御大典記念「村正」「正重」特別公開に際しまして、多くの方々にご参拝を頂き、深く感謝申し上げます。

地域の方々と手作りで整えた会場ですので、ご不便をおかけしたかもしれませんが、皆を笑顔にできたのではないかと安堵しております。

此度 御神宝である「村正」「正重」各2振 計4振の内 各1振ずつの漆を研ぎました。

そのきっかけは、3年前に桑名市博物館で開催された「村正展」を見学された方からの一通のメールでした。

  【抜粋】 昨日桑名市博物館で、村正展を見させていただきました。大変面白く拝見させていただきましたが、唯一残念なのは、貴神社所有の刀剣が漆塗りされたままだったことです。戦時中に疎開のために漆を塗ったと説明されていましたが、もはや戦後何年たつのでしょう。当時は手入もできにくいために、漆を塗り保護したことはいい判断だったと思います。しかし、戦後これだけ時間もたてば、本来の姿に復元すべきではないでしょうか。刀はきちんと磨いて手入れをしてこそ、価値があると思います。三重県の文化財にも指定されたとのことですので、ぜひ元の姿に戻されますことを期待します。

このメールは「村正」「正重」の修繕を考える一歩でした。

神社の代表として、御祭神に喜んで頂けるよう、毎朝食事を準備し、時には音楽や舞楽を奏でます。すべて神様の為に最善を尽くすのがよう、心がけています。

漆で塗られた刀は「最善の状態か」と考えたとき、そうではないと思いました。神様は「村正」「正重」がの真の姿の方が喜んでくれると感じました。

そして1年半前に福井款彦氏と出会い「村正」修繕プロジェクトが2人で始まりました。

福井氏の紹介により松村壮太郎氏(研ぎ師)上畠誠氏(刀匠)を紹介いただきました。

若手の2人であることは意外でしたが、福井氏による「研いだ後が大切であり、まだ若い2人なら御神宝のこれからを長く守ってくれるはず」との一言は、先を見据えた有難い言葉でした。

私を含め4者で何度か話し合いを行い、また福井氏の指導により順調に作業は進み、10月15日に研がれた「村正」「正重」を見たとき、鏡のように輝く刀剣を見たときの感動は計り知れません。

刀剣の知識のない私は、正直に申し上げますと「刀剣に触れたくない」と感じました。尊く美しい刀剣への敬意と、無知な人間が触る価値がないように思えたからです。同席した、福井氏により「まず所有者である宮司さんが持ってください」と言われたとき、また松村氏に「今後が大切なんです。これだけのものを守るのは、本当に大変です。」と言われたとき、自身が所有者であることを実感し、父や祖父が守ってきたものの重みを感じました。

無事に修繕の終わった刀剣を、ご神前に供え、地域の方々と共に神様に報告することで、通常は終わりですが、今回は特別公開を実施いたしました。

10月20日~22日までの御大典記念の特別公開で、私の伝えたかったことがあります。

1つは、「村正=桑名」という考えを定着させ、地域の誇りとなってほしい。

桑名に住む方々が、村正が桑名で作られていたことを知らない方も多く、また桑名に来ても「村正」を常時見ることができる施設はありません。今ある刀剣を長く守っていくために、地域の方々、小さな子供まで足を運べるように無料にしました。「村正」「正重」を見た人がこの感動を伝え、地域に広まっていくことを期待しています。

2つは、「村正=妖刀」ではないということです。

妖刀という肩書で有名になったという言い方もできますが、根拠のない俗説であり、徳川家も「村正」を所有しています。また当神社には家康公の孫「千姫」により「桑名東照宮」が境内に建てられております。忌み嫌う「妖刀」が奉納されている神社に家康公を祀るはずもありません。

そして奉納者である「村正」が丹精込めた技術の結晶を神様に奉納することは、自身の誇りであります。いつの時代であっても「村正」の気持ちを傷つけてはなりません。

この2つ意識改革は、私が春日神社の宮司を務める間に行わなければならない課題と思います。

そして、その意識改革のきっかけとして、今回の特別公開であります。

また現在、刀匠である上畠氏に依頼をして「村正」写しの制作を検討しております。公開初日の講演で松村氏が「写しは日本の文化であり、レプリカとは違う」と言われました。私は本物と同等に扱うものが「写し」であると感じています。

「村正」の写しを制作し、桑名宗社(春日神社)に来たら「村正」を見ることができるようにすることは、「村正=桑名」にさせる大切な一歩となります。

その事業に関しては、SNSで随時報告を致しますが、一人でも多くの方に支えていただければ幸いに存じます。

そのために、3年前に桑名宗社奉賛会を立ち上げ、活動しております。皆で神社を支える団体ですので、ご協力いただければ幸いです。(案内状は問い合わせフォームに申請いただければ郵送いたします。)

この特別公開では、戦災により被害を受けた刀剣31振も同時に展示いたしました。疎開させなければ、「村正」も同じ運命であったかと思うと、恐ろしくなります。

地域の方のみならず、全国津々浦々からお越し頂きましたこと、また「村正」「正重」を愛していただきましたことに深く感謝申し上げ、これより先の糧とさせていただき、精進してまいります。

この令和の時代が、平和で豊かな、共存共栄の社会になれば幸いです。

今回の村正修繕はNHKの密着取材を受けていました。放送は来年3月ごろを予定しています。放送エリアは東海地方と北陸地方(愛知・岐阜・三重・静岡・富山・石川・福井)のようです。詳細がわかりましたら、追って報告いたします。